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    2018年を展望して

     今年もまもなく暮れようとしているが、多くの問題が持ち越されて年を越すことになる。

     今年はイギリスのEU離脱という大きな出来事があり、未だに混乱が続いている。EUの離脱交渉をめぐって、ユンケル委員長とメイ首相との会談が12月4日(月)と8日(金)に行われ、EUへの清算金の負担にイギリスが応じるとともに、他の条件について協議を続けることになったのでイギリスの強硬離脱によってEUが大混乱になることは避けられたと思うが、いずれにしてもイギリスがEUから離脱する。また欧州先進国の中でも最も安定したリーダーシップを発揮してきたドイツのメルケル首相が先般の選挙でCDU(キリスト教民主同盟)、CSU(キリスト教社会同盟)の議席を減らした。また連立与党のSPD(社会民主党)も大きく議席を減らして連立を離脱してしまった。そこで他の政党との連立工作を進めたがうまくいかず、シュタインマイヤー大統領の仲介でふたたびSPDとの大連立の交渉が進められつつあるが、まだ予断を許さない。

     イギリス、ドイツばかりでなく、その他の欧州諸国も大変な状況になってきているが、こうした中で、来年起こり得るリスクを私なりにいくつか考えている。一つ目は金融リスク、二つ目は戦争のリスク、三つ目は地政学的なリスク、そして四つ目は世界のリーダー不在のリスクである。

     世の中というのは混乱があればその中から必ず次の秩序がつくられていく。それがあるから人類の歴史はずっと続いてきている。

     振り返ってみると、第二次世界大戦の時は、戦争終結のかなり前から戦後の秩序をどう構築するかという話し合いが行われていた。当時はアメリカの国力が圧倒的に強かった。歴史的にアメリカの国力は、第二次世界大戦前夜、大戦の最中、戦後しばらくの間が最も強かった。日本が敗戦国となった前年の1944年7月にニューハンプシャー州のブレトン=ウッズで会議が行われ、米英を中心とする45ヶ国によって経済、金融の面から世界の秩序をどうするかが話し合われ、IMF(国際通貨基金)、IBRD(国際復興開発銀行、現在の世界銀行)の設立が決定された。それを裏付ける為に、基軸通貨としてドルをしっかりと位置付け、金1オンス35ドルと金兌換という固定相場制が合意された。その一方で、水面下において、スターリンが指導するソ連と自由主義国の中心国であるアメリカとが色々なディール(取引)をやっていた。そういう中で国連がつくられたが、後になって、アメリカでソ連のスパイ容疑で告発され有罪となったルーズベルト大統領の側近だったアルジャー・ヒスと、ソ連の外務大臣を長く務めたグロムイコが綿密な交渉、調整を行った結果、国連憲章がつくられている。

     従って日本が常任理事国に入りたいと言ってもなかなかうまくいかないし、依然として国連憲章の敵国条項から外されていないこういうことも、国連の成り立ちに立ち帰って考えてみればなるほどと思うことが多い。

     このように第二次世界大戦の終わりの頃につくられた秩序がずっと今まで続いてきたが、最近になってうまく回らなくなってきた。一つにはアメリカの国力低下が背景にある。ブレトン・ウッズ会議で金1オンス35ドルと決められた時には、世界の金の大半はアメリカにあった。その後、アメリカも経済が悪化し、財政も悪くなってくるので金も売らざるを得ない状況になってくる。ドルと金の交換を維持することができない状況の中から、1971年にいわゆるニクソン・ショックが起こり、ドルと金は交換停止になってしまった。それ以降、ドルはまさにペーパーマネーになってしまったわけで、実際には何の価値の裏付けはなく、決済通貨であることによって信用が維持されてきた。また一方において、ペーパーマネーとして、いくらでも印刷すればお金ができるので、どんどんドルを増やしていき、それを世界にばらまいて、アメリカの戦略をなんとか遂行しようとしてきた。そういう中で、マネーゲームの世界が生まれてくる。オーストリアのハイエクやアメリカのシカゴ学派の中心であるフリードマンらが新自由主義を唱え、それに政治的に呼応したのがイギリスのサッチャーであり、アメリカのレーガンである。サッチャリズムやレーガノミクスを実行して、政治的にも新自由主義に則って政策を実現しようとした。

     新自由主義というのは、私なりに簡単に解釈すると、大きいもの強いものをより大きく強くしていけば全体がよくなるという考え方であり、竹中平蔵氏と私が常にぶつかったのもこの点である。彼は大きいものをより大きく強くしていかなければ競争力も生まれないし、経済成長もあり得ないと言う。トリクルダウン(滴り落ちる)という言葉もよく使っていた。富裕層や大企業が豊かになってくれば、富が下に滴り落ちてくるから全体がよくなるという発想である。ところが私はそれには条件があると指摘した。お祝いのイベントの時にシャンパンタワーが用意されることがあるが、シャンパンのグラスをタワーのように積み上げていき、上からシャンパンを流すとどんどん上から下に落ちてきて、下のグラスまで一杯になる。ただしグラスが全部同じ大きさだから下のグラスにまで注がれるのである。上のグラスがどんどん大きくなっていったら、永久に下には落ちてこないことになる。まさに新自由主義に則って豊かになった人達はそういう考え方の人が多い。多くの豊かな人達が全体のことを考えてくれればよいのだが、共助共生の社会をつくるという発想がない。そういう人達は自分さえよければよいということで、限りなく富を追求する。

     その結果何が起こったかというと、現在世界の大富豪上位8人が下位からの36億人分の資産を保有する世界になってしまった。さらに世界の62人の富裕者が全世界の半分の富を持つようになってしまった。そして我が国でも自民党が中心になってつくってきた本来、資本主義ではできるはずのない世界に誇るべきいわゆる一億総中流社会を小泉政権以降崩壊させてしまった。現在日本でも2%の金持ちが20%の富を保有するという、格差の大きな国に変わってしまったのである。

     そして一部の富裕層は税負担を免れる為に、世界に数ヶ所ある、いわゆるタックス・ヘイブン(租税回避地)で巨額の資金の運用を行っていることが、最近パナマ文書やパラダイス文書によって露見し、世界中で批判を浴びている。

    (続く)