• Home
  • プロフィール
  • 略歴
  • 事務所
  • メール
  • 亀井亜紀子公式サイト

    アメリカの大統領選挙の結果について。

     世界中から注目を集めていたアメリカの大統領選挙の結果が判明し、予想に反して次期大統領にドナルド・トランプ氏がなることになった。私は早い段階からトランプが勝つ可能性があると、色々な場で発言をしてきた。たまたま投票日の前日、私が主催する政経文化フォーラムで、その可能性が極めて高いと発言したが、参加者もそれはあり得ないと思われる方が多かったようだ。今回の選挙結果について私自身は全く驚いてはいない。

     やはり、この原因はメディア等でも色々言われているが、何と言ってもアメリカの総合的な国力が第二次世界大戦以降ずっと低下してきている中で、今まで以上に格差が拡大し、雇用が奪われ、所得が減って苦しんでいる人達が増えてきたということだと思う。これも以前に指摘したことだが、アメリカの人口構成の比率がどんどん変わってきており、白人の占める割合が落ち、ヒスパニック系の人達、黒人更には移民の人達の比率が上がってきていることも背景にある。

     もともとアメリカは建国以来、世界の中で最も自由で、公平で、強く、豊かな国だということで結束をしてきたのだと思う。しかし現実には人口のわずか1%の人達が3分の2以上の富を独占する。こういう姿は以前からあった。特に新自由主義に基づくグローバリズムを推進した権力の中心、いわゆる東部のエスタブリッシュメントと言われる人達を中心として金融資本と石油資本と軍事産業がスクラムを組んで推進してきた経済財政金融政策、外交安全保障政策の結果として益々貧富の格差が広がった。レーガン政権以降のアメリカの政権は、共和党であろうが民主党であろうが少数の勝ち組の人達の利益を益々拡大させた。それに耐えられない国民の怒りが爆発した結果が、今回の大統領選挙に現れたのだと思う。アメリカは自由な国であり、豊かな、強い国であることに変わりはないが、決して公平な国ではなくなってきているということの現れでもあろう。

     今回の大統領選で負けたヒラリー・クリントンについて言えば、多くのスキャンダルが明るみになってきたように、いわば富を独占している少数の人達によってつくられる大統領であり、就任すれば更にその人達の為の利益を図るであろうということへの反発が現れたということだろう。一方のトランプは、実業家であり政治経験も軍隊経験もないが、大金持ちであるということからすれば、クリントンを支持しない人達にとって全く住む世界が違う人ではある。ただ現在のアメリカを動かしている権力構造に組み込まれていない人という評価が多くの人達からあって、今回の結果になったのだと思う。

     今まで全く政治に関わってこなかった人だから、すべての政策はまさにこれからだと思うので、今後どういう政策をつくり出してくるのか、予断を許さない。日本は今、安倍内閣も政府も経済界も大きなショックを受けて動揺していると思うが、トランプという今までのアメリカになかった異質の大統領が誕生することは、決して日本にとって悪いことばかりではない。むしろアメリカも大きく路線転換をするだろうから、日米間でよく調整をしながら、ただアメリカの言うなりになって、アメリカと一体化し、アメリカの戦略に組み込まれていくという路線から脱却して、日本の自主的な路線を選択することが可能になるよいチャンスだと私は受け止めている。

     例えば安全保障政策についても、安倍首相は「日米同盟は揺るぎないものである。」ということを言っている。何も日米が対抗したり争ったりする必要は全くないが、やはり日本はアジアにおけるアジアの国であり、アジア情勢の変化に伴って独自の外交安全保障政策を取っていくべきだと思う。日米安保によって今でも75%以上の米軍駐留経費の負担をしているが、更なる負担をしなければ駐留米軍が出て行くというのがアメリカの考え方であるならば、日本もそのことを踏まえた新しい安全保障政策をつくっていくべきで、例えば日米安全保障条約をやめて、我が国の防衛は我が国が責任を持つ為に、自衛隊を沖縄に駐留させることも一つの選択肢として十分あり得るのではないか。

     同時に私が以前から主張しているように、世界に敵をつくらない外交、特にアジアにおいて敵をつくらない外交、そういう外交政策と一体になった新しい安全保障政策をつくっていく時期ではないかと思う。戦後の今までの路線の延長線を進んでいけばいいのだという発想、考え方を脱して新しい世界情勢、新しいアジア情勢に応じた新しい安全保障政策をつくっていくという発想の大転換が今必要になってきたのではないかと思う。世界の平和に貢献する日本の姿勢をここで改めて大きく打ち出していくことが大切である。

     先日、核兵器の法的禁止措置について交渉する国連会議をニューヨークで来年開くとした決議を123ヶ国の賛成で採択した時に、日本は「反対」をした。核保有国が反対をするのはそれなりの理由があるのかもしれないが、唯一の核被爆国である日本がそれに同調して反対をするのは、全く世界平和の流れに反したことで、やはり堂々と核廃絶に向けて積極的な歩みを各国に働きかけて進めていくのが日本の当然の役割だと思う。安倍政権は一体何をやっているのかという感じがする。

     一方、TPPに関して今、国会で強引に承認をさせようとしているが、もともとTPPはニュージーランドやシンガポール、ブルネイ、チリなどの小さな国々が推進してきたものを、アメリカが対日戦略上有利に使えると思って主導権を握った経緯がある。そのTPPを推進してきたアメリカで新しい大統領が明確に離脱をすると言っている。アメリカが批准しなければ発効しないわけで、発効する可能性がほとんどなくなっている協定を無理矢理野党や多くの国民の反対を押し切って承認させようとしている政府与党の姿勢は、まるでピエロの役を演じているようにしか見えない。

     安倍内閣や与党は来年1月までのオバマ大統領の残りの任期のうちにアメリカ議会で承認をしてもらおうと、その後押しをする為に日本は先んじで批准するのだということを言っているが、現実の問題として任期を終えようとしているオバマ大統領にそれだけのリーダーシップは期待できない。更に今回の大統領選挙と同時に行われた上下両院の選挙で、両院とも共和党が多数を占めた状況下で、共和党の新しい大統領が明確にTPPから離脱すると言い切っている以上、上下両院の共和党がその意向に反して承認をするということはあり得ない。11月9日(水)に共和党のマコネル上院院内総務が「TPP関連法案は年内の議会で採決されることはない。」と明言している。こういう時に日本の国会で無理押ししてTPPの承認を進めようとしている政治感覚が私には理解できない。

     新しい大統領が誕生することによってアメリカも変わるし、世界も変わっていく。そういう中で従来の発想から大きく転換をすることが今何よりも必要だと思う。それが実行できない安倍内閣であるならば、いずれ国民から見放される時が来るだろう。今弱体化している野党も、大きな流れの変化をいち早く汲み取って、新しい路線を国民の前に提示していく大きな責任があると思う。