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    混迷する世界情勢と日本の決断

     先日参議院選挙が終わり、与党が絶対多数を得た状態で、中央政界は9月の臨時国会まで夏休みに入っている。一方の都知事選は、私は当初から小池百合子氏が勝つだろうと思っていたが、思った通り小池氏の圧勝という形で終わった。これから都議会との関係をどう調整をしていくのか、また批判の強い2020年東京オリンピックに関する様々な不透明な問題をどう明るみに出し、都民、国民の理解を得られるようにしていくか、小池新知事の大きな課題になっている。都知事選挙での公約がどのように守られ、進められていくのか、その手腕が問われている。

     今回の都知事選の結果は、既存の様々な組織や政党が有権者から信頼されなくなってきていることをはっきりと示している。いくら組織を挙げて締め付けてみても、それが思うように機能しなくなってきた。また同時に、いわゆるネット社会が益々広がる中で、ネットの使い方が若者をはじめ有権者に大きな影響を与えることがはっきり見えた選挙ではなかったかと思う。小池氏自身が考えたのか、参謀が考えたのかはわからないが、小泉純一郎氏の政治手法と極めて似た選挙戦術だったと思う。既得権を守ろうとする巨大な勢力によって、寄ってたかっていじめられている弱い立場に置かれていることを強調し、自分は敢然としてそれと戦うというイメージをつくり上げた。日本人の潜在的な心理、いわゆる判官びいきをうまく引き出して、無党派層や政党に対する不信感を持つ人達の気持ちをうまくまとめた。選挙戦術としては実に見事だったと言わざるを得ない。

     大都市東京は特に無党派層が多い地域だから、小池氏の手法が特に成功したと言えないこともないが、やはり日本ばかりではなく世界的に従来の政治手法が通用しなくなってきているように見える。11月に本選挙を迎えるアメリカの大統領選挙にしても1年くらい前までは、まさかトランプ氏が共和党の候補に選ばれて、しかもヒラリー氏と比べてどちらが勝つかわからないというような状況になろうとは誰も想像できなかっただろう。それだけアメリカ社会が変貌してきており、また病んでいるということの表れのように見える。アメリカの人口構成で有色人種の比率が上がり、アメリカ社会で黒人やヒスパニックの人達、更には移民してきた人達の影響力が大きくなってきて、白人社会がだんだん縮小していく、また勝者・敗者の色分けがはっきりして格差がどんどん広がっていく。いわゆるプア・ホワイトといわれる白人貧困層の人達の、社会に対する怒りと将来不安が益々大きくなってきていることが背景にあるようだ。

     トランプ氏は一見、非常識極まりないことを言い続けているように見えるけれど、今のアメリカ社会での勝者に対する怒りを持つ人達の共感を得ていることも間違いないと思う。アメリカ社会を建国以来リードしてきた東部のエスタブリッシュメント、WASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)と言われる人達の指導力が失われつつあることの表れだと思う。アメリカのいわゆるシカゴ学派と言われる人達を中心にした新自由主義、市場原理主義に基づく経済財政・金融政策を、アメリカのレーガン大統領やイギリスのサッチャー首相をはじめとするリーダー達が進めてきたが、その新自由主義の行き詰まりが様々な形で表れてきた。リーマン・ショックもその一つの表れだった。そして今まさにその終焉を迎えている。大きく政策転換をしなくてはいけない時だが、どうすればいいのかがはっきりわからないような状況にあり、世界全体が混乱し困惑している。

     今日までアメリカで大きな力を持った通称ネオコン(ネオコンサバティブ=新保守主義)と言われる人達は、シカゴ学派と連携し、金融資本や石油資本、軍需産業を更に大きくしながら世界の安全保障政策においてリーダーシップを行使しようとの考え方で進んできた。この路線もまさに破綻をしてきており、アメリカ国内でも旧勢力と新しいものを求める勢力とのせめぎ合いが今まさに行われている状況だと思う。それと同時にヨーロッパでも中東やアジア地域においても、テロが日常茶飯事のように行われる危険な社会情勢になってきている。これからどのようにそれぞれの地域を安定させ、世界を平和に導くかという処方箋はまだどこにも見つからない。更には新しい世界秩序をつくる為の中心的な役割を果たす指導者も国もない状況になっている。

     そうした中で、今までのようにアメリカ中心で物事を考え、世界を見る日本の人達からすると、あまり好ましいことではないのかもしれないが、最近の中東やヨーロッパの情勢を見ると、ますますロシアの存在感が大きくなっているように見える。ロシアはもちろん、経済面においても問題がないわけではない。資源価格の下落をはじめ色々な課題を抱えているし、今行われているリオデジャネイロ・オリンピックにおいてもドーピング問題で目の敵にされている。その真偽の程はわからないが、全くなかったとは思えないわけで、国家的な不正行為が行われたということも認めざるを得ないと思う。逆に言えば、ロシアの存在感が大きくなってきていることに対する不安が、そういうところにも表れてきているのかなとも思う。

     それぞれの国のトップリーダーが国民の信頼を失いつつある中で、共産主義国家ではなくなったとは言ってもロシアが独裁国家であることは間違いないわけで、プーチン大統領の独裁体制が際立って強固になってきている。ロシア国内からプーチン批判の声は出てくるはずもなく、プーチン体制が安定していることから思い切った外交安全保障政策を打ち出せるのだと思う。中東を見てもシリアのアサド政権を一貫して支え、イランとの連携を益々強め、一時対立関係になっていたトルコとの関係も修復してISにも対峙する。こういう中で、ロシアがどう動くかが中東問題を見る上で最重要になっているし、そのことが西欧社会に与える影響も一際大きい。一方、イスラエルのネタニヤフ政権がますます中東、ヨーロッパで孤立してきているが、そのイスラエルとともに、従来アメリカと強い連帯関係を持っていたサウジアラビアは原油価格の下落がきっかけとなって経済財政が悪化して政治的に極めて不安的になってきている。そのサウジアラビアを支援する湾岸の国々とイスラエルが連携して、アメリカのネオコン勢力の支援を受け、イランやシリアと事を構える危険性も増している。しかしそのことに対して、アメリカはもはや国を挙げて積極的に介入していこうとする考えもない。結局のところロシアがどう動くのかが大きな鍵になってきている。

     アメリカの戦略として、軍事的にはNATO加盟国、経済的にはEUとしっかり連携しながら政策を進めてきたわけだが、そのいずれもがうまくいかなくなってきて、西ヨーロッパ諸国のアメリカ離れが益々はっきり表れてくると思う。アメリカの強い経済力がなければ、EUの中心国であるドイツにしてもフランスにしてもアメリカに頼っているわけにはいかない。むしろロシアの存在感を西ヨーロッパ社会も無視できなくなってきている。

     プーチン大統領はドイツ、フランスとの政治的、経済的連携を深めていき、大西洋から日本海までの広大なユーラシア経済圏を構築しようという狙いがあるように見える。こういうロシアの動きに対して、中国はロシアと対峙しようという考えはないし、アメリカと事を構えようという考えもない。国内に色々な問題を抱えているので、今の習近平指導部が今後どうなっていくのか予断を許さないが、人民元を世界の決済通貨にしようという考えはなく、アジアにおける決済通貨としての立場をより強めていきたいと考えている。ロシアともアメリカとも事を構えるのではなく、協調関係を持った中でアジアにおける盟主の座を狙っているように見える。(続く)