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     「アベノミクス」の崩壊

     私は最初からアベノミクスといわれている経済財政金融政策は失敗すると言ってきたが、いよいよその政策的な破綻が目に見えてきたと思う。今の安倍内閣の経済財政金融政策は小泉政権の時に始まった政策の延長線上にある。アメリカを中心として続いてきた新自由主義の考え方に則った路線、当時竹中平蔵氏が中心になって進めてきたものだが、簡単に言えば強いもの、大きいものをより強くし、大きくすれば全体がよくなるだろうという考え方である。経済用語で言うところのトリクルダウン、要するに富裕層や大企業を豊かにすると富が国民全体に滴り落ち、経済が成長するという考え方だが、一向にそういう状況にはなってこなかった。富裕層や大企業だけがどんどん富を蓄積する一方で、益々格差が拡大している。かつて一億総中流といわれた時代には、日本を支えてきた中間所得層の個人消費が中心になって日本経済の規模を大きくしてきたわけだが、その中間所得層がどんどん所得を減らしてくる状況の中で貧富の格差が拡大し、また大都市と地方の格差も益々拡大してきた。安倍内閣が目的としてきたデフレの解消は依然として実現されていない。本来ならば金融政策に先行して的確な経済財政政策を実行しなくてはいけないのに、それを実行せずに金融政策だけでデフレ解消をやろうとしたところにそもそも無理がある。

     小泉政権の頃を振り返ってみると、まさに金融緩和を実行した。日銀の当座預金残高を毎月30兆円〜35兆円に維持するということを続けた。ところがいくら日銀の当座預金残高が膨らんでいっても、そのお金が日本経済の中で回っていかない。金融機関も結局、当座預金で金利が稼げるので積極的な貸し出しには全く消極的な状況だった。なぜ金融機関がそういうことになったかというと資金需要がなかったからである。金融機関がお金を貸したいと思う企業は、借金をしなくても増資や社債発行等の直接金融という方法はあるし、潤沢な内部留保も持っている。一方、金融機関からお金を借りたい中小・零細企業には、危険なリスクを冒してまで貸したくない。貸し出しを増やすよりも日銀に積んでおいたほうがまだいいということなのだろう。そういう状況下で2001年から5年続けた量的緩和の効果が出なかったので2006年3月にいったんそれをやめたのである。

     ところが安倍政権になってから黒田日銀総裁を中心にして再びめちゃくちゃな量的緩和を始めた。本来、日銀には物価の安定、金融システムの維持、通貨の信用、中央銀行としての信頼維持という役割がある。そして物価安定の為の金融政策の中心は金利政策であるべきなのである。金利を上げたり下げたりしながら景気動向を見て調整をして物価を安定させるというのが本来のやり方だが、どんどん金利を下げて事実上ゼロ金利で推移してきたものだから金利政策が機能不全に陥ってしまった。今までに金利を上げるべきタイミングは何度かあったと思うが、それを見送ってしまった。結局ゼロに張り付いたまま今日までずっと来てしまった。そういう状況なのに、何とかしろと政権からプレッシャーがかかるから日銀としてできることは量的金融緩和以外にない。しかしその結果、デフレが解消されたかと言えば一向に解消されないし、GDPも大きくならない。辛うじてアベノミクスが成功したかに喧伝されたのは円安と株高。輸出企業及び株式を保有している企業や富裕層は円安と株高のメリットを受ける。だから円安と株高を維持することがアベノミクスの目的みたいになってしまった。経済界も「アベノミクスでよくなっている。」と評価していたが、経済全体がどうなっているのかを見ると、よくなっているどころかむしろ悪くなってきている。昨年まで実質賃金が4年連続で落ちている。また先日発表があったが、昨年10月−12月期のGDPは1.4%下がり、個人消費が0.8%減、住宅投資も1.5%減、公共投資2.7%減、輸出0.9%減と、なにもいい数字が出てこない。更に言えば安倍内閣が発足してから個人消費は1兆5,000億円も減っている。

     年が明けてから急激に株価が下がってくるという状況になり、ちょっと信じられないような乱高下が続いている。もともと日本の株式市場は6割以上が外国人投資家の資金によって動いている。この1月の外国人投資家による日本への株式投資額は約1兆6,000億円の売り越しになっている。従ってそれだけでも当然株価は下がるはずである。更に昨年11月に鳴り物入りで株式上場が実現した郵政3社の株式も、公開価格を割り込む状況になってきている。こうした状況を何とかしないとアベノミクスは失敗だと言われてしまう。そこで日銀と内閣が一体のようになってマイナス金利を導入した。ところがその結果がいい方向ではなく、全く逆の方向に向かっている。マイナス金利の発表直後はアメリカが一時的に金利を上げたこともあってドル高円安になったが、すぐにその流れは変わり、円高ドル安の流れになってきている。本来、為替レートはドルと円で言えば双方の購買力平価で動いていくもの。実際のドル、円の実力がどうなのかということで上がったり下がったりしていくのが本来の姿である。それを人為的に変える為、無理なことをやるからかえっておかしくなる。アメリカ経済は今、決していい方向に向かっているわけではない。原油価格が大幅に下落したことによって、伸びるはずだったシェールガス産業はまったく振るわない。石油ばかりではなく資源価格全体が下がってきている。一時、住宅バブルのような現象があったが、それもずっと続くようなわけではない。アメリカの経済の先行き不安があるので決して金利を上げたからといってドル高にはならない。逆に日本の場合は、惨憺たる状況にはなっているけれども、巨額の個人金融資産を活用して国債を国内で回しているのでまだ力はあると市場では見られている。しかも対外純資産が世界一の国であるし、外貨準備も潤沢に持っている。世界の通貨がおかしくなってきている中で、円が一番安心できる通貨だということで円が買われる傾向が強まっている。以前にも述べたが、ドルと円との関係だけを見ているとわかりにくいが、他の通貨と円に関してはずっと円高の動きになってきているのである。

     日銀当座預金の一部をマイナス金利にするということでマイナス金利政策が始まったが、早くも市場にその影響が出ており、国債の金利も急落している。国債を大量に持っている金融機関などは持っていれば持っているほど含み損が大きくなってくるからできるだけ早く売りたい。ところが本来なら金融機関は潤沢なお金を企業や個人に貸し出すのが筋なのに資金需要がないということで、日銀が市場から国債をどんどん買っている間は一時的に国債を購入する。いずれは外国株式や外国債券に資金を振り向けていくのだろうが、なかなか貸し出しには回らない。しかしながら、日銀が国債を買い入れるといっても限界があるわけで、日銀が国債を買えなくなる状況になった時には金融機関も個人も買わなくなるから、国債の買い手がなくなって国債が暴落する。その結果、最終的に国民生活が破壊される政府機能の停止という最悪の状況を招くことになる。

     赤字公債の発行については、毎年、財政特例法を通して実行してきた。本来、財政法で赤字公債の発行は禁止されているのに、それを特例だと言って毎年赤字公債を発行してきた。その結果、特例が特例ではなく当たり前のようになってしまった。更に今国会に提出している特例公債法案は、これが成立すれば単年度ではなく2016年度から2020年度までの5年間赤字公債を発行できることになってしまう。これでは財政規律が保たれるはずはない。このことにしても本来、財務省に大きな責任がある。もともと佐藤内閣で福田大蔵大臣の時に、財政特例法をつくって赤字公債の発行に踏み切ったのである。当時は世界経済が非常に混乱していて、日本にも世界経済をリードする役割を果たしてほしいとの声も強くあり、日本の経済の立て直しの為に思い切った財政出動しかないとの判断で赤字公債の発行に踏み切ったのである。その効果は確かに表れて、その後、高度経済成長路線が始まったのである。そうなれば当然自然増収が生まれてくる。そういう状況になった時に赤字公債の発行を止めなくてはいけなかった。あくまでも特例法であって、財政法では禁止しているのだから当時の大蔵省が「止めましょう。」と強く主張しなくてはいけなかった。ところが何も言わずに発行を続けて自然増収による増収分を大盤振る舞いし、全部使い切ってきた。当時の大蔵省、今の財務省に大きな責任がある。今、アベノミクスの無謀な量的緩和や国債の大量買入れで日銀が大きな責任を背負わなくてはいけないのと同じように、財務省の責任は極めて大きい。ところがメディアは一切そういうことを言わない。何か目に見えない力にコントロールされているとしか思えない。

     資源市場と為替市場と金融市場はみな連動して動いている。日本だけの話ではなく、世界の市場が混乱をしてきている状況は益々顕著になってきている。そういう中で国民生活をどう守っていくのかを政治の責任として真剣に考えるべきではなかろうか。そしてまず最初にやらなくてはいけないのは、小泉内閣以降ずっと主張してきたことだが、中間所得層に対する思い切った所得減税を実行することだと思う。財務省はその財源がないと言うが、外為特会に20兆円の積立金がある。その積立金の一部を使えば所得減税は確実に実行できる。そういうことをやって個人の家計を少しでも豊かにしなければ、アベノミクスの破綻によって多くの国民の生活はガタガタに壊されてくることになるし、当然税収も落ち込むことになり国や地方の財政も破綻する。

     世界的に新自由主義の限界が表れてきている。中東も大混乱をしている。宗教や民族の問題が存在することは間違いないが、それとともにそれぞれの国の中で貧富の格差拡大が限界を超えてしまっていることが混乱を生み出す大きな原因になっている。世界が新自由主義と早く決別して経済財政金融政策を全く新しい発想でやり替えていかなくてはいけない。もう一度日本を立て直していかなくてはいけないギリギリの段階まで来てしまったように思う。