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    安倍改造内閣と今後の政治課題

     安倍政権にとって最大の課題は、経済の先行きがどうなるかということだろう。消費税率を本年4月から引き上げたことについて、政府はたいした影響はないと強調し、それをフォローするメディア等も同じようなことを宣伝してきたが、数字は嘘を言わない。4−6月期の実質GDPが年率で7.1%下がったということは非常に大きな影響が出ていることを示している。しかもその中身を見てみると、在庫投資と外需がプラス要因としてカウントされているが、在庫投資はまさに後ろ向きの投資なわけであり、そういったことを勘案すると、大幅なマイナスになっているのである。

     GDPが大きくならないのは国内需要の中心になる個人消費が伸びないからである。個人の実質所得が減っているのだから当然である。一部の大企業でボーナスが増えたとか多少のベースアップが行われたとか、そういうプラス要因はあるだろうが、日本の企業、特に中小企業をはじめする企業全体を見れば依然、給与所得が増えている状況ではない。そこへ持ってきて円安が進行している。円安で輸出企業が潤っていることは間違いないが、輸出品をつくっている製造コストは輸入原材料が実質上がっていることにより、コスト高になっているのは間違いない。更に輸入原材料ばかりではなく、円安で石油、食料品などの生活必需品が高騰し、家計を直撃している。

     そういう中で本当にデフレから脱却して、日本の経済を成長路線に乗せようと思うのならば、個人消費が増えていくような政策を思い切って実行すべきである。財務省は財政のやりくりのことしか考えないので、国債の発行残高が1,000兆円近い現状において、少しでも財政再建を図る為には増税以外にないと主張する。消費税率を予定通り、現行の8%から来年10月には10%に引き上げる為にすべてを集中しているような状況である。しかしながら、所得が増えない中で消費税率が更に上がれば家計はますます悪化し、それこそ破綻をしてしまうことになりかねない。デフレの解消どころか、消費が更に落ち込み不景気がどんどん進んでいく、その中で所得は減少し物価が上がる、いわゆるスタグフレーションという最悪の状況に陥る危険性も出てきていると思う。

     大事なことは政治、特に安倍首相が率いる内閣が財務省のコントロールの下に動くのではなく、財務省を抑えて国民生活を豊かにし、個人消費が上向いてくるような大胆な経済財政政策をどう実現するかということであり、そのようなリーダーシップを首相が発揮できない限り、最悪のシナリオに向かっていくように思う。

     日本が1,000兆円近い国債発行残高を抱えておりながら、まだ日本の国債に対する信用が失われていないのは、そのほとんどを国内で消化しているところに最大の原因がある。今、日本国債の外国人投資家の保有割合は10%未満、9割以上は国内で引き受けられている。最近は日銀引き受けもどんどん増やしており、国内最大の引き受け手になっている。国内で民間金融機関が国債を引き受ける原資になっているのは国民の預金である。金利水準が極めて低いにも関わらず、個人金融資産が増えてきており、今年6月末で1,630兆円になっている。そのうち53%が現金や預金で、すでに865兆円に上っている。このお金が国内にあるうちにこれを国内で循環させる思い切った政策を断行すべきなのである。このお金がなくなってしまったらそれこそ日本国債は暴落してしまう。そして長期金利が上昇して日本経済は大変な事態になる。

     もう一つ、日本国債の信用の裏付けになっているのは、対外純資産が世界一ということである。日本の対外純資産は2013年末で365兆円、しかも23年連続世界1位であり、2位の中国を大きく引き離している状況である。これだけの規模の対外純資産を持ち、個人金融資産を持っている国であるから、日本国債が海外から信用されているのである。その虎の子をなくさないうちに、それを生かした経済財政政策をやらなくてはいけない。

     私は繰り返し述べているが、個人消費を伸ばす為には法人税率を引き下げることよりも、中間所得層を中心にした所得減税を断行して家計の可処分所得を増やすべきなのである。所得減税の財源がないと財務省はいつでも言うが、無利子非課税国債の発行、あるいは外為会計の為替差益の活用など、知恵を出せば財源はいくらでも出てくる。家計をどんどん苦しくしておいてデフレを解消し、景気を回復するといってもそれは無理なことである。円安にして株価を上げて、そのことによって輸出大企業が潤っているのだから、そうした企業が得た利益を従業員の所得に回せと財務大臣はしきりに言っているが、いくら政府がかけ声をかけたところでそのようにはいかない。経営者にしてみれば、世界経済が極めて不透明な中で企業の先行きを考えれば少しでも余裕を持った経営をやりたいと考える。従って内部留保は膨らむばかりである。

     一方、経済財政の面で景気回復をさせる為の思い切った政策がないまま、金融だけで景気回復を図ろうとして金融緩和をずっと続けてきている。同様に金融緩和を続けてきたアメリカのFRBのイエレン議長は今、慎重に金融引き締めに入るタイミングを計っているようであり、早晩間違いなく金融引き締めに転じてくる時期が来る。そうなれば今の日米間の為替レートをはじめ経済環境は一変してしまうことになる。こういう国際的な経済の動きに加えて国際政治情勢が極めて不安定になっている。つい先日、スコットランドの独立が住民投票で辛うじて避けられたが、こうした動きはイギリスばかりではなく、スペインのカタルーニャ州の独立の動きもあり、国家の枠組みがどんどん変わってくる可能性が色々なところに出てきている。更に中東情勢も非常に緊迫化しており、世界全体が想像もつかないような複雑な動きになってきている。アメリカの総合的な国力が落ちてきているので、アメリカ単独ではどうにもやりようがない。国際協調といっても欧州には欧州の事情がある。アメリカがいくら統一歩調を取ってほしいと呼びかけても限界がある。更に国連はますます無力化してきている。

     世界の政治が大きく揺れ動いている中で経済も大きく動いていくことになる。国内政局だけを見ると安倍政権は極めて安泰のように見えるが、私は決してそうは思わない。更に日本経済や国民生活が益々厳しくなってきている現状において、現政権に代わる政権が全く見通せないことは極めて不幸なことだと言わざるを得ない。与党も野党も今、世界で何が起こっていて、その中で日本はどういう影響を受けるのかをしっかり掌握し、実りのある国会論戦をしてほしいと思う。