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    安倍内閣の暴走を誰が止めるのか。

     安倍内閣がついに集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行ったが、まさに結論先にありきでそこに持っていく為のシナリオを作って、そのシナリオ通りに事を進めてきた結果だと言わざるを得ない。

     私は集団的自衛権の行使を容認することには断固として反対であると一貫して言い続けてきたが、安倍内閣はこの閣議決定によって長く続いてきた我が国の立憲主義を根底から覆すという取り返しのつかないことをやってしまった。一内閣の解釈によって事実上憲法の条文を変えることを認めてしまったら、最高法規たる憲法が意味をなさなくなるわけで、絶対に許してはならないことである。

     安倍首相は「最高責任者は自分だ。」としきりに言うが、安倍首相は行政権の最高責任者であるが、国家の最高権力者ではない。憲法65条に「行政権は、内閣に属する。」と書かれており、それをもって自分は最高責任者だと言っているのだろうが、その行政権は憲法が内閣に与えているのであって、憲法の上位に内閣総理大臣が位置しているわけではない。憲法によって行政権を委ねられているということである。従って憲法を変えていいとか勝手に解釈していいというような権限を与えられているわけではない。だから憲法99条には「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。」と書かれているわけで、憲法を遵守するということ、勝手な解釈は許さないという当然のことを述べて敢えて釘を刺しているのである。

     そして本来は憲法に違反しているのかしていないのかの判断は裁判所がやるべきことである。立法権、行政権に携わる人達の行為が憲法に違反しているのかどうかは最終的には最高裁が判断する。それを一内閣が勝手に判断してよいなどとは全く想定していない。憲法81条には「最高裁判所は一切の法律命令規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」と明記されている。そして憲法の下で行政権を委ねられている内閣の行為が憲法に違反しないようにするとともに、多くの法律の整合性を保つ為に内閣法制局がある。従って内閣法制局は法律の専門家の集団でなくては困るし、そのトップである内閣法制局長官は主に法制局内部から専門家を起用することが慣例となっていたのである。ところが今回は内閣法制局でブレーキがかかると困るから、長官に外務省出身者を敢えて起用し、憲法に違反していないということを法制局に言わせる、むしろ積極的に進める為に手伝わせようとした。まさに内閣法制局が本来やるべきことをいい加減にしてしまった。今、解釈改憲はおかしいと主張している人達の中に複数の良識ある内閣法制局長官経験者がおられるが、今回のことで内閣法制局の権威は著しく損なわれたと思う。

     そもそも国権の最高機関である国会が、内閣のやっていることはおかしいと当然言わなくてはいけない。ところがその国会において、特に最大の与党の自民党が黙ってしまっている。かつての健全な自民党であれば、党内で党を二分する大激論が行われたはずだが、現状は村上誠一郎代議士が勇気を持って正論を述べているだけで、他の多くの議員は執行部を恐れて御身大切とばかりに異論を唱えようとしない。その自民党が多数を占めている上に野党の中にも共同歩調をとる党があるのだから、国会の場で反対意見が非常に出にくくなっている。そのことも安倍首相の行動を早めたことにつながったと思う。

     国権の最高機関である国会は与野党ともにここでもう一度、内閣総理大臣はどういう立場なのか、憲法上どういう権限を与えられているのかよく考えなくてはいけない。歴代の内閣が個別的自衛権は容認できるけれど、集団的自衛権の行使は容認できないという判断をしてきた。憲法上の制約があるから容認できないわけであり、行使を容認したいのなら堂々と憲法改正をやるべきで、内閣が勝手に判断して憲法を事実上変えてしまうことを許してはならない。更に連立与党である公明党の良識ある判断に期待したが、残念ながら我々の期待は裏切られてしまった。公明党の幹部が閣議決定後に述べていることは我々には意味不明である。平和主義は公明党が一番大切にしていることで、平和の党であることは全く変わっていないと言っているが、そうであるならば集団的自衛権の行使を容認することがどうして平和を守ることにつながっていくのか、私には全く理解できない。

     集団的自衛権の行使を推進しようとしている人達の言い方によると、周辺の国々、中国や韓国や北朝鮮の日本に対する攻撃の抑止力が強まったと言うが、これは全く逆だと思う。抑止力が強くなるというより、むしろ攻撃される危険性が増すことに他ならない。安倍首相は国民生活を守り、国の安全を守る、その為にプラスなのだと強調するが、アメリカの総合的な国力が落ちてきている中でアジアにおけるアメリカの存在感を維持する為に、いかに日本を利用していくかということがアメリカの本音だろう。日本の国土や国民の安全を守る為というよりも、日本の国の外でアメリカと共に戦う、そのシステム作りを始めようとしているとしか思えない。

     集団的自衛権の行使容認の例として機雷の除去、掃海活動を挙げているけれど、機雷はまさに戦闘行為の中で敷設されているのであって、それを除去することは敷設した側から見れば敵対行為になる。こちら側がいくら平和の維持の為に除去していると言ってみても、機雷を敷設した側はそんなふうには思わない。またアメリカがどこかの国と戦っている時に武器・弾薬やその他の物資を補給する。これを後方支援活動を言っているけれど、武器・弾薬などの物資を補給する行為そのものが戦闘行為と見做される。それから戦闘地域や危険な地域から邦人を早く日本へ返そうと、その邦人輸送をするアメリカの艦船を守ることも必要だと言うが、そのことを何もアメリカに頼む必要はないし、そういう危険な地域にいる邦人を日本に安全に返すことはまさに個別的自衛権で十分できる。アメリカの助けを借りなくても日本が独自の判断で行えばいいことである。そういうことを例に挙げて議論すること自体、全く意味のないことだと思う。

     いずれにしても日本が戦争に巻き込まれる恐れが格段に強まったと言える。「家族が自衛隊員である以上、命令には従わざるを得ないと思うけれど、日本の国土や国民を守る為に自衛隊に入ったはずなのに、他国に行って戦闘行為に参加しなくてはいけないというのはいかがなものか。」などと自衛隊員の家族が心配するのは当然のことだ。こういうことであるならば自衛隊に入っていてほしくないという声も出てくるだろうし、集団で自衛隊を辞めるような人達が出てくることもあり得る。そういうことが広まってきた時に現在の志願制が成り立たなくなってくる。自衛隊の勢力を維持する為に、いずれは徴兵制の道を開くことになってくる危険性もある。とにかくわざわざ日本の周辺を危ない状況にしていくような外交政策をとっておいて、危ないからアメリカと一体化しなくてはいけないというようなことを言うのも、平和国家のリーダーとしては間違っていると思う。世界の緊張が高まって危険な状況になればなるほど、日本を敵視する国を減らし、より多くの国にとって必要な存在になっていく道を選ぶべきだと思う。安倍首相は「普通の国になる。」と言うが、普通の国である必要はない。むしろ世界に例がない平和憲法を持っている特別な国であることを誇りに思うべきだし、他の国にはない独自の外交戦略を確立していくべきだと思う。

     安倍内閣の方針を支持する若い人達の中に、「日米安全保障条約を結んでいるのだから、お互いに守り合うのが当然ではないか。日本がアメリカに守ってもらっておきながら、アメリカを守れないというのはおかしい。」とコメントする人がかなりいる。それを言うのであれば、集団的自衛権の行使を容認するからには米軍の日本における駐留を断るべきだと言いたい。日本はアメリカを守る義務はない、守ろうとしても憲法の制約があってできない、だからそれに代わるものとして米軍の基地と駐留米軍を日本の国内に置くことを認める、しかも基地の駐留経費を日本も応分に負担するということで成り立ってきたのである。だから集団的自衛権の行使を容認するというのなら、自分の国は自分の力で守るという国民の覚悟を前提にして日米安全保障条約を見直し、米軍の基地や米軍の日本からの撤退を求めるべきではなかろうか。自らの力で自国を守れない国が他国を守れるはずがないし、米国と対等な立場で集団的自衛権を行使できるはずもない。

     やはりこの際は、今回の内閣の決定は憲法に違反しているという訴えを多くの国民が起こすべきではなかろうか。そして裁判所の判断を仰ぐことと同時に国民に信を問うべきであろう。直近の衆参両院の選挙の時に、集団的自衛権の行使を最大の争点として選挙に勝ったのならば、安倍首相が言っているように国民の判断を得ているのだと言えるかもしれないが、そうではないわけだから、やはりもう一度速やかに解散をして国民の信を問わなくてはいけない。しかしながら前述したように、今回の内閣の判断を容認するような野党もあるのだから、野党全体がまとまって解散に追い込むようなエネルギーは出てこない。国会が閉会になったので閉会中審査をやるようだけれど、内閣の決定を覆すような論戦は期待できない。秋の臨時国会か来年の通常国会で内閣は関連した法律の改正案を提出することになっていくが、その法案の審議を通じてもっともっと本質的なことを国民に知らせていくような論戦を展開する為に、今こそ野党は頑張らなくてはいけない。

     現在、集団的自衛権の行使容認に反対する人達のデモが首相官邸周辺をはじめ各地で行われたり、地方議会で反対決議が行われたりしている。こうした国会の外での一般の国民の勇気ある行動が国会議員を動かし、国会における国の命運をかけた大論争が始まることを心から期待している。