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    2017年を展望して

    2016年12月29日(木)

     アメリカで次期大統領にトランプ氏が選ばれたことは、まさにアメリカ社会の行き詰まりを象徴している。トランプ氏は選挙に勝たなくてはいけないから、選挙戦でずいぶん極端なことを言っていたが、アメリカを実際に動かしている従来からの水面下の力がなくなっているわけではない。外交評議会をはじめとして、そういった力がトランプ政権に対して強く及んでいくことは間違いない。最近、発表されている人事を見ても、選挙中に強く攻撃していた金融界や石油業界から人材を登用しており、既存勢力との話し合いが進んでいるように見える。

     また、連邦準備制度にトランプ氏は挑戦的なことを言っていたが、FRBの仕組みに手を入れることは政治的に極めて危険なことであり、なかなか思い通りにはできないだろう。選挙では極端なことを言って勝ったけれど、かなりバランスの取れた政策を実行せざるを得ないだろう。ただ言えることは、外交や国際的な安全保障ということより、トランプ氏を支持した多くの有権者の期待に応えていく為にも、アメリカの経済を再生し、雇用の場を増やし、所得を増やすことに最優先で取り組むことになってくると思う。

     従来から私は言ってきていることだが、ロシアの存在感はますます大きくなってくるだろう。中東情勢もロシアがどう動くかで方向が決まることになりつつある。ヨーロッパの主要な国々もロシアとうまく連携しないとやっていけない状況になってきている。国内基盤がますます安定してきているプーチン氏が自信満々で色々な手を打ってくることになると思う。以前、このコラムでも若干触れたが、プーチン氏はアメリカとヨーロッパを分断しながらEUの連携にくさびを打ち込み、ヨーロッパの求心力を弱めて、ロシア主導で西ヨーロッパからロシアを経て日本海に至る大ユーラシア経済圏のようなものを構築する野望を持っているのではないだろうか。今度の北方4島における日本との経済協力もその一環ではないかと私には見える。

     そういう流れを見ていくと、今は日米関係で言えばドル高・株高になっているが、もう少し長期的に展望するとドル安・株安になってくるように見える。アメリカも製造業を再構築するということになってくると、アメリカの製造業が製品を国内向けばかりではなく、海外に輸出することで収益を得るとすればドル安が良いに決まっている。トランプ氏の政策が顕在化してくると、自ずからドル安になってくるだろう。

     グローバル経済は国境を越えて動き回る巨額のお金と情報によって、それをうまく利用した人達はますます富を蓄え、アメリカでは1%の富裕層が9割の富を占有していると言われるが、世界的に見ても62人の大富豪が世界の富の半分を持っているという極端な社会になっている。竹中平蔵氏がよく言っていた「トリクルダウン」現象は起こるはずがない。飽くなき利益の追求、富を増やすことへの執着によって、ますます一部の人達が富を蓄えるだろうが、その富がしたたり落ちることはなく、多くの人々の貧困化が加速することになってしまう。資本主義が無秩序に進むと必ずそうなるわけで、それに対して共産革命を起こさなくてはダメだというのがマルクスやレーニンの考えだった。その共産主義社会がうまくいかないということが証明されて、ソ連が崩壊したはずなのだが、その後のインターネットの普及や金融のグローバル化によって資本主義社会が行き着くところまで来てしまったということかもしれない。

     最近の各国の政治的な動きを見ていると、既存の政党や国家機関に対する信用が全くなくなって、賞味期限、使用期限が過ぎたというか、今の時代に全て合わなくなってきた。その結果、想像もしないような政治状況が出てくる。イタリアでも「五つ星運動」が力を強めている中で、来年選挙が行われる。フランスも極右政党の動きが活発になっている。ドイツもメルケル首相の指導力に限界が来ている状況である。

     まさに後世の人が今の時代を振り返った時に、インターネットが世界を変えたと言うだろう。そのいわば始まりになっているのではないかと思う。インターネットは使い方によっては確かに便利なものだが、極めて危険な部分もある。情報があっという間に世界中を駆け巡る。そのことによって国境を越えて人間の意識が変わってしまう。そういう中で各国がこれから様々な模索を続けながら、社会をなんとか再構築しようとしていくことにならざるを得ない。私はやはりここで根源的な人間の価値観、何の為に人間は生きているのか、人間の幸せは一体何なのか、そういう根源的なことをもう一度しっかり考え直していく時期が来たと思う。そうした価値観を捉えた人達が住んでいる地域、決してそれほど豊かではないけれど、その地域に住んでいることが幸せなのだというように思える人達が健全に育ってくることが一番大事なことだと思う。

     今、インターネットやスマートフォンに踊らされ、自分では掴めるはずのないようなものを一生懸命追い求めたりして、そういう中でどうしようもない挫折感を味わったりする。スマホで情報に振り回され、ゲームに明け暮れているうちにますます一人一人の人間が孤立感、疎外感を深め、起こってはならないような犯罪が続発するような社会になってくる。人間が幸せになる為に考えたはずの様々なテクノロジーが人間をどんどん不幸にしていくということになりつつある。

     長い歴史を通じて、人間はお互いに支え合い、助け合って生きていくものだとごく自然に信じてきたのが日本である。恵まれた自然環境の中でもう一度共助・共生の社会を全国どこの地域においても改めて構築していく方向に向かえば、経済的な発展のスピードが少々スローダウンしても決してそれだけで不幸せになるとは思えない。要はここでみんながもう一度立ち止まって、本当に生き甲斐や幸せを感じられる社会をつくろうという動きが出てくることに期待をするし、私は日本であればそれができると信じている。まさに今こそ日本の出番が来たのではないかと思う。

    2017年を展望して

    2016年12月27日(火)

     本年は昨年来のISの活動をはじめ、シリア、イラク、トルコ等中東情勢の混乱が続き、更にはヨーロッパ各地におけるテロ事件の続発やイギリスの国民投票によるEU離脱、アメリカのトランプ次期大統領の当選等世界中で目まぐるしい動きが展開されたが、現状は昨年暮れに私がこのコラムで述べた通りの世界情勢になってきたのではないかと思う。またその一方で、いよいよ金融資本を中心としたグローバル経済が終焉を迎え、そのことによって生まれた負の遺産をいかに解消するか、とりわけ富の偏在と格差の拡大をどう解消するかが世界的な課題になってきたと思う。

     もともといわゆるシカゴ学派といわれるフリードマンを中心にした一部の学者達の学説を政治に取り入れ、1980年代にレーガン、サッチャーという米英のリーダーがそれを活用して様々な規制を取り払い、より自由な経済活動を活発にし、社会を活性化するという政策を実行して、一時はレーガノミクス、サッチャリズムとしてもてはやされた。特にサッチャーは官の役割を減らして、できる限り民間中心の経済に持っていこうとした。その政策の失敗が批判されはじめていたにも関わらず、我が国では小泉元首相が構造改革を提唱し「官から民へ」と叫び、その政策を竹中平蔵氏に丸投げした。その典型が改革の本丸と位置付けられた郵政民営化だったわけである。グローバル経済による米英の失敗が見えていた中でわざわざ構造改革に突き進んだことにより、大変なエネルギーの損失とともに国民も取り返しのつかない大きな損失を被ったのである。

     あの当時、私は「何でも民営化すればいいものではない。何の為に官があるのか。官と民との役割分担をもう一度きちっと整理すべきだ。」と主張した。その上で民がやるべきものを官がやっているということであれば、その部分を民営化するのは理解できるが、すべて官が悪で民が善だと言わんばかりの政策を実行したのである。その結果、日本の社会が完全に壊れてしまい、結局、様々な規制緩和や非正規雇用の拡大によって利を得たのは大企業と一部の資産家だけであり、日本においても富が偏在し、格差が拡大してしまった。

     前述したように今、アメリカにしてもヨーロッパにしても格差社会をどう解消するかが大きなテーマになっている。あの当時を振り返ってみれば、日本は先進国の中で最も格差が少ない国だった。中間所得層が大きな消費力を持っていたから、日本のGDPが大きくなったわけだし、一億総中流と言われる中で国民の多くの人達がある程度の充足感を持てる社会になっていた。言ってみれば、世界の成功モデルになるような社会をつくってきていたのに、それを壊してしまったのだから、小泉政権以降の今日までの政権は、日本にとってマイナスなことばかりやってきたように私からは見える。今、先進国はもとより、どこの国でも、グローバル経済によって壊された国内の社会構造をどうやって再構築するかに目を向けていかざるを得ない状況になっている。民の行き詰まりは見えてきているわけで、自ずから官や公の役割が大きくなってこざるを得ない。

     アメリカが今、金利を上げ始めている。FRBが先日0.25%の引き上げを決定し、来年は3回引き上げをすると公言している。アメリカの金利が上がることは世界経済に大変な影響を与える。特に金融機関がすぐに影響を受け、ドルで目いっぱい資金調達をしてきたような世界の金融機関が皆回らなくなってくる。既に顕在化しているのはイタリアで、5つの銀行が危なくなってきている。世界最古の歴史を持つイタリア第3位のモンテ・パスキ銀行が経営危機ということで、一時は産油国のカタールが支援するという話もあったが、結局国が公的資金を投入することになった。民間の協力ではとても再建不可能な事態になれば、国が支援するより仕方がない。EUではもともと銀行救済は国がやらない、民間どうしで共助していくという理念があるが、そんなことは言っていられない。金融機関がもたなくなったら国民生活が成り立たなくなるわけで、国を挙げて金融の仕組みを守らなくてはいけない状況になっている。これはイタリアばかりではなく、スペインもポルトガルも同様の状況に陥っている。トルコでは先日、ロシアの大使が射殺されるという大変痛ましい事件が起きたばかりだが、トルコも通貨のリラがどんどん下落している。

     一方、アメリカはちょうどサブプライムローンの破綻やリーマンショックの時とかなり似たような状況になっている。近年、不動産や自動車産業がアメリカ経済を牽引してきたようだが、金利が上がってくると住宅ローンがまたもたなくなってくる。自動車もローンで買い込んだ人達が手放さざるを得なくなってくるだろう。サブプライムローンやリーマンショックの時と同じように、生活破綻者が続出してくることになるだろう。

     日本も既に国債の金利が上がり始めており、長期金利ばかりでなく、中期、短期の金利も上がるということになったら、国民の生活設計が成り立たなくなってくる。もともとほとんどの国民が借金を抱えており、一般のサラリーマン家庭でも職場が安定していて、毎年ある程度の所得が増えていくという前提で長期の借金をしているわけである。金利が上がる一方で所得は全然増えない。職場も不安定でいつ解雇になるかわからないという状況になったら、続々と生活破綻する人が出てくるだろう。

     東京だけを見ると、オリンピックを控えていることから、競技場の施設の建設予定地の周辺では不動産の価格が上昇している。また高額の超高層マンションがどんどん売れてきたという状況だが、これもいつまでも続くようなものではない。不動産を売り買いしながら富を蓄えていこうという一部の人達もいるが、これからそういう人達のやりくりが全然つかなくなってくると思う。こうなると、日本においても公的な支援が求められてくる場面が出てくるのではないかと思う。国の歳入、税収が増えない中で、ますます国に対する期待が大きくなってくるということになると、かつて日本の戦後復興の為に大きな役割を果たした財政投融資の役割をもう一度見直すことも必要になってくると思う。しかし財投の主な原資となっていた郵貯、簡保がすでに民営化され、その資金はどんどん海外に出て行ってしまっている。

     先日、国会で通した補正予算にしても、いわゆる真水の部分は少なく、財投にかなり期待せざるを得ないような状況になっている。民が善で官が悪だと言っていたことが、全くそうではなかったと証明するような姿になっている。政府系金融機関の役割をはじめ、政策金融が重要なのだということが改めて再認識されるようになってきている。

     小泉氏は「自民党をぶっ壊す。」としきりに言っていたが、当時、私は「自民党を壊すだけならいいけれど、日本を壊してしまう。」と言い続けた。まさにその通りになってしまい、かつての健全な自民党は完全に壊されたようだが、それよりも日本の社会そのものが壊されてしまった。これを再構築するのは並大抵の努力ではできない。最近、安倍内閣の姿を見ていると、いよいよ支離滅裂というか、一貫性が全くなく、何か行き当たりばったりで少しでも点数稼ぎをしておき、選挙に持ち込もうとしているようにしか見えない。

     先日、ロシアのプーチン大統領が山口県長門市を訪れ、安倍首相との日露首脳会談に臨んだ。今回の会談で、国民は将来に向かってかなりの成果が得られるだろうと期待をしていたけれど、全くの期待外れとなった。1956年の日ソ共同宣言よりも更に後退してしまったという見方をしている人も少なくない。2人の密室の話の中では領土問題に触れたのかもしれないが、少なくとも表には全く領土ということが出てこない。プーチン氏は以前にも北方領土問題について、柔道で言う「引き分け」だとしきりに言っていたが、引き分けどころかプーチン氏のいわゆるタフネゴシエーター、強かさが鮮明に示されたという印象である。ロシア側は今回の交渉で何も失っていない。北方四島において「特別な制度」をつくって、経済協力をしていくことを決めたというけれど、主権の問題は全く表に出てこない。ロシアは絶対に主権を譲っていないわけで、主権がロシアにある中で「特別な制度」ということになると、ロシアにおける特区制度のようなことしか想定できない。「特別な制度」の下で、仕事をする一部の日本企業やその企業で働いている人達にとっては恩恵があるかもしれないが、その企業が儲けたからといって国民に還元するようなものではない。国民全体からすると、ロシアにいいように利用されてしまうようにしか見えない。しきりに将来の領土返還に道を開くものだと強調している人達もいるけれども、冷静に見れば完全にプーチン氏の一人勝ちとしか見えない。国民が拍手喝采するという状況ではなかったから、年内解散には踏み切れなかったのではなかろうか。

     安倍首相は、アメリカのオバマ大統領の最後の花道づくりという意味なのかも知れないが、12月26日(月)〜27日(火)の日程で慰霊の為に真珠湾を訪れた。これも太平洋戦争の時の真珠湾攻撃を巡る裏の色々な動きを調べてみれば、今この段階でわざわざ日本の総理が訪問するというのはいかがなものかなと思う。TPPにしてもなぜ強引に国会で承認するようにしたのか、アメリカの次期大統領のトランプ氏はTPPから離脱すると言っているわけだし、もともと推進をしてきたニュージーランドの首相も突然辞めてしまった。TPPが本当に日本の為になるのかどうか、交渉過程が表に出ていない部分がたくさんある。原発の問題も沖縄の問題も全く迷走状態である。オスプレイの事故を「墜落」ではなく「不時着」だと言って強弁する。アメリカに抗議をしてもアメリカは事故原因も明らかにしないまま訓練を再開させる。

     安倍首相は来年の早い時期に解散を断行して、長期政権を狙う考えなのかもしれないが、お膝元の都議会で公明党が自民党と離れることになってしまった。もともと都議会における自公の協力関係が国政に発展していったわけで、公明党は都政を重要視している。公明党は次の都議会選挙に向けて、今人気のある小池知事と何らかの形で関係を持っておきたいということの表れだと思う。そういう中で、解散のタイミングを捉えるのはなかなか難しいのだろうが、早くやってしまわないと都議会の選挙が迫ってくるし、選挙区の区割の改正も周知期間を取らなくてはいけないことから解散が難しくなってくる。しかも経済状況が悪くなる可能性が強いということがハッキリと見えてきたら選挙を打てなくなる。従って1月の通常国会を召集して、できるだけ早く解散をしようと考えているように見える。(続く)

    アメリカの大統領選挙の結果について。

    2016年11月10日(木)

     世界中から注目を集めていたアメリカの大統領選挙の結果が判明し、予想に反して次期大統領にドナルド・トランプ氏がなることになった。私は早い段階からトランプが勝つ可能性があると、色々な場で発言をしてきた。たまたま投票日の前日、私が主催する政経文化フォーラムで、その可能性が極めて高いと発言したが、参加者もそれはあり得ないと思われる方が多かったようだ。今回の選挙結果について私自身は全く驚いてはいない。

     やはり、この原因はメディア等でも色々言われているが、何と言ってもアメリカの総合的な国力が第二次世界大戦以降ずっと低下してきている中で、今まで以上に格差が拡大し、雇用が奪われ、所得が減って苦しんでいる人達が増えてきたということだと思う。これも以前に指摘したことだが、アメリカの人口構成の比率がどんどん変わってきており、白人の占める割合が落ち、ヒスパニック系の人達、黒人更には移民の人達の比率が上がってきていることも背景にある。

     もともとアメリカは建国以来、世界の中で最も自由で、公平で、強く、豊かな国だということで結束をしてきたのだと思う。しかし現実には人口のわずか1%の人達が3分の2以上の富を独占する。こういう姿は以前からあった。特に新自由主義に基づくグローバリズムを推進した権力の中心、いわゆる東部のエスタブリッシュメントと言われる人達を中心として金融資本と石油資本と軍事産業がスクラムを組んで推進してきた経済財政金融政策、外交安全保障政策の結果として益々貧富の格差が広がった。レーガン政権以降のアメリカの政権は、共和党であろうが民主党であろうが少数の勝ち組の人達の利益を益々拡大させた。それに耐えられない国民の怒りが爆発した結果が、今回の大統領選挙に現れたのだと思う。アメリカは自由な国であり、豊かな、強い国であることに変わりはないが、決して公平な国ではなくなってきているということの現れでもあろう。

     今回の大統領選で負けたヒラリー・クリントンについて言えば、多くのスキャンダルが明るみになってきたように、いわば富を独占している少数の人達によってつくられる大統領であり、就任すれば更にその人達の為の利益を図るであろうということへの反発が現れたということだろう。一方のトランプは、実業家であり政治経験も軍隊経験もないが、大金持ちであるということからすれば、クリントンを支持しない人達にとって全く住む世界が違う人ではある。ただ現在のアメリカを動かしている権力構造に組み込まれていない人という評価が多くの人達からあって、今回の結果になったのだと思う。

     今まで全く政治に関わってこなかった人だから、すべての政策はまさにこれからだと思うので、今後どういう政策をつくり出してくるのか、予断を許さない。日本は今、安倍内閣も政府も経済界も大きなショックを受けて動揺していると思うが、トランプという今までのアメリカになかった異質の大統領が誕生することは、決して日本にとって悪いことばかりではない。むしろアメリカも大きく路線転換をするだろうから、日米間でよく調整をしながら、ただアメリカの言うなりになって、アメリカと一体化し、アメリカの戦略に組み込まれていくという路線から脱却して、日本の自主的な路線を選択することが可能になるよいチャンスだと私は受け止めている。

     例えば安全保障政策についても、安倍首相は「日米同盟は揺るぎないものである。」ということを言っている。何も日米が対抗したり争ったりする必要は全くないが、やはり日本はアジアにおけるアジアの国であり、アジア情勢の変化に伴って独自の外交安全保障政策を取っていくべきだと思う。日米安保によって今でも75%以上の米軍駐留経費の負担をしているが、更なる負担をしなければ駐留米軍が出て行くというのがアメリカの考え方であるならば、日本もそのことを踏まえた新しい安全保障政策をつくっていくべきで、例えば日米安全保障条約をやめて、我が国の防衛は我が国が責任を持つ為に、自衛隊を沖縄に駐留させることも一つの選択肢として十分あり得るのではないか。

     同時に私が以前から主張しているように、世界に敵をつくらない外交、特にアジアにおいて敵をつくらない外交、そういう外交政策と一体になった新しい安全保障政策をつくっていく時期ではないかと思う。戦後の今までの路線の延長線を進んでいけばいいのだという発想、考え方を脱して新しい世界情勢、新しいアジア情勢に応じた新しい安全保障政策をつくっていくという発想の大転換が今必要になってきたのではないかと思う。世界の平和に貢献する日本の姿勢をここで改めて大きく打ち出していくことが大切である。

     先日、核兵器の法的禁止措置について交渉する国連会議をニューヨークで来年開くとした決議を123ヶ国の賛成で採択した時に、日本は「反対」をした。核保有国が反対をするのはそれなりの理由があるのかもしれないが、唯一の核被爆国である日本がそれに同調して反対をするのは、全く世界平和の流れに反したことで、やはり堂々と核廃絶に向けて積極的な歩みを各国に働きかけて進めていくのが日本の当然の役割だと思う。安倍政権は一体何をやっているのかという感じがする。

     一方、TPPに関して今、国会で強引に承認をさせようとしているが、もともとTPPはニュージーランドやシンガポール、ブルネイ、チリなどの小さな国々が推進してきたものを、アメリカが対日戦略上有利に使えると思って主導権を握った経緯がある。そのTPPを推進してきたアメリカで新しい大統領が明確に離脱をすると言っている。アメリカが批准しなければ発効しないわけで、発効する可能性がほとんどなくなっている協定を無理矢理野党や多くの国民の反対を押し切って承認させようとしている政府与党の姿勢は、まるでピエロの役を演じているようにしか見えない。

     安倍内閣や与党は来年1月までのオバマ大統領の残りの任期のうちにアメリカ議会で承認をしてもらおうと、その後押しをする為に日本は先んじで批准するのだということを言っているが、現実の問題として任期を終えようとしているオバマ大統領にそれだけのリーダーシップは期待できない。更に今回の大統領選挙と同時に行われた上下両院の選挙で、両院とも共和党が多数を占めた状況下で、共和党の新しい大統領が明確にTPPから離脱すると言い切っている以上、上下両院の共和党がその意向に反して承認をするということはあり得ない。11月9日(水)に共和党のマコネル上院院内総務が「TPP関連法案は年内の議会で採決されることはない。」と明言している。こういう時に日本の国会で無理押ししてTPPの承認を進めようとしている政治感覚が私には理解できない。

     新しい大統領が誕生することによってアメリカも変わるし、世界も変わっていく。そういう中で従来の発想から大きく転換をすることが今何よりも必要だと思う。それが実行できない安倍内閣であるならば、いずれ国民から見放される時が来るだろう。今弱体化している野党も、大きな流れの変化をいち早く汲み取って、新しい路線を国民の前に提示していく大きな責任があると思う。

    混迷する世界情勢と日本の決断

    2016年8月11日(木)

     混迷する世界情勢の中で、日本は一体どうすればいいのか。従来の路線や考え方を大きく転換しないと、これからの時代、日本は平和な国際環境の中で国民生活を守っていくことが難しいと思う。

     例えばトランプ氏は、日米安全保障条約に基づく在日米軍の存在は日本の為にあるのだから、駐留経費を日本が100%負担するのは当然だということを言っているが、これは全くの考え違いである。日米安全保障条約はアメリカのアジア戦略に日本が協力するという合意の上につくられた条約である。アメリカの戦略が変わり、アメリカにとって必要ではないと言うのであれば、この際、日米安全保障条約を止める決断をするよいチャンスではないだろうか。しかしながら今の安倍政権の路線は、私の考えとは全く違う方向に向かおうとしている。アメリカの外交安全保障戦略を進める上でアメリカの足りないところを日本が補う為に集団的自衛権を行使できるようにし、その延長線上に憲法改正を視野に入れている。私は従来から主張しているが、日本を守っていく為には世界に敵をつくらないことが最も大事なことだと思う。防衛力を強化することは必要だが、まさに専守防衛に徹し、平和外交を進めながら日本独自の力で日本を守る。従って自衛隊の存在を憲法上明記するという憲法改正は必要だと思うが、アメリカと一体となってアメリカのアジア戦略、世界戦略を補完するようなことは敵を増やす結果になり、日本の国民を益々危険に晒すことになる。あくまでも平和憲法の根幹を変えるべきではない。

     自らの国を自らの力で守る国民の強い意識と自覚がなければ独立国家とは言えない。沖縄にこれ以上過大な負担を強いることをすべきではないし、むしろ平和憲法の理念を進めて行けばスイスのような永世中立国を目指すということも一つの重要な選択肢としてあるように思う。

     8月8日(月)に天皇陛下が生前退位のご意向を示唆されたお言葉を報道した中国のメディアの中に、天皇陛下は平和を愛する天皇だとコメントしていたのが極めて印象的だった。第二次世界大戦の戦地で亡くなった方々への慰霊のご訪問が続いている最近の天皇皇后両陛下のお姿を見ていれば、外から見ていてもそういうお気持ちは伝わっていくのだなと改めて感じた。象徴天皇のお立場として、政権に対して直接的なご発言ができないということを十分おわかりの上で、平和のメッセージを発信しておられることに深い感銘を受けている。

     今、原発の問題にしても、原子炉の廃棄物の最終処理を行う技術が完成されていないのに原発を日本に導入し、どんどん増やしてきたことは明らかにエネルギー政策の失敗だと思う。福島の原発事故の後、ドイツのメルケル首相がいち早く「脱原発」を決断したように日本もまず原発を止めるという政治決断をし、その上ですぐにとはいかないのだから、何年かかけて原発を止めていくスケジュールをつくるべきではなかろうか。またそれと同時に電力需要にきちっと応えていく為の従来の水力、火力に加えた再生可能エネルギーのシェアをどうやって高めていくかというスケジュールも明確につくって示していくべきだと思う。その為に必要な投資資金を惜しんではならない。電力会社だけに過大な負担を強いることは不可能なことであり、国の責任で財政的にもきちんと対応していくべきだと思う。

     今までの路線の延長線上を走っていくのは一番楽だろうが、それではどうにもならないところまで来ている。アベノミクスの破綻が目に見えてきているし、黒田日銀もいよいよどうにもならない状況になっているのだから、経済、財政、金融をはじめすべての面で政策の大転換、抜本的な見直しをしなくてはいけない。その為にメディアにはもっと本当のことを報道する姿勢を取り戻してほしい。政権に従い、政権を持ち上げていればそれでいいという最近の姿勢はあまりにもひど過ぎるように思う。権力の行き過ぎを国民の立場に立って批判し、是正するということと、ありのままの姿を国民に正しく伝えるというメディア本来の役割をしっかり取り戻してほしい。

    混迷する世界情勢と日本の決断

    2016年8月10日(水)

     先日参議院選挙が終わり、与党が絶対多数を得た状態で、中央政界は9月の臨時国会まで夏休みに入っている。一方の都知事選は、私は当初から小池百合子氏が勝つだろうと思っていたが、思った通り小池氏の圧勝という形で終わった。これから都議会との関係をどう調整をしていくのか、また批判の強い2020年東京オリンピックに関する様々な不透明な問題をどう明るみに出し、都民、国民の理解を得られるようにしていくか、小池新知事の大きな課題になっている。都知事選挙での公約がどのように守られ、進められていくのか、その手腕が問われている。

     今回の都知事選の結果は、既存の様々な組織や政党が有権者から信頼されなくなってきていることをはっきりと示している。いくら組織を挙げて締め付けてみても、それが思うように機能しなくなってきた。また同時に、いわゆるネット社会が益々広がる中で、ネットの使い方が若者をはじめ有権者に大きな影響を与えることがはっきり見えた選挙ではなかったかと思う。小池氏自身が考えたのか、参謀が考えたのかはわからないが、小泉純一郎氏の政治手法と極めて似た選挙戦術だったと思う。既得権を守ろうとする巨大な勢力によって、寄ってたかっていじめられている弱い立場に置かれていることを強調し、自分は敢然としてそれと戦うというイメージをつくり上げた。日本人の潜在的な心理、いわゆる判官びいきをうまく引き出して、無党派層や政党に対する不信感を持つ人達の気持ちをうまくまとめた。選挙戦術としては実に見事だったと言わざるを得ない。

     大都市東京は特に無党派層が多い地域だから、小池氏の手法が特に成功したと言えないこともないが、やはり日本ばかりではなく世界的に従来の政治手法が通用しなくなってきているように見える。11月に本選挙を迎えるアメリカの大統領選挙にしても1年くらい前までは、まさかトランプ氏が共和党の候補に選ばれて、しかもヒラリー氏と比べてどちらが勝つかわからないというような状況になろうとは誰も想像できなかっただろう。それだけアメリカ社会が変貌してきており、また病んでいるということの表れのように見える。アメリカの人口構成で有色人種の比率が上がり、アメリカ社会で黒人やヒスパニックの人達、更には移民してきた人達の影響力が大きくなってきて、白人社会がだんだん縮小していく、また勝者・敗者の色分けがはっきりして格差がどんどん広がっていく。いわゆるプア・ホワイトといわれる白人貧困層の人達の、社会に対する怒りと将来不安が益々大きくなってきていることが背景にあるようだ。

     トランプ氏は一見、非常識極まりないことを言い続けているように見えるけれど、今のアメリカ社会での勝者に対する怒りを持つ人達の共感を得ていることも間違いないと思う。アメリカ社会を建国以来リードしてきた東部のエスタブリッシュメント、WASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)と言われる人達の指導力が失われつつあることの表れだと思う。アメリカのいわゆるシカゴ学派と言われる人達を中心にした新自由主義、市場原理主義に基づく経済財政・金融政策を、アメリカのレーガン大統領やイギリスのサッチャー首相をはじめとするリーダー達が進めてきたが、その新自由主義の行き詰まりが様々な形で表れてきた。リーマン・ショックもその一つの表れだった。そして今まさにその終焉を迎えている。大きく政策転換をしなくてはいけない時だが、どうすればいいのかがはっきりわからないような状況にあり、世界全体が混乱し困惑している。

     今日までアメリカで大きな力を持った通称ネオコン(ネオコンサバティブ=新保守主義)と言われる人達は、シカゴ学派と連携し、金融資本や石油資本、軍需産業を更に大きくしながら世界の安全保障政策においてリーダーシップを行使しようとの考え方で進んできた。この路線もまさに破綻をしてきており、アメリカ国内でも旧勢力と新しいものを求める勢力とのせめぎ合いが今まさに行われている状況だと思う。それと同時にヨーロッパでも中東やアジア地域においても、テロが日常茶飯事のように行われる危険な社会情勢になってきている。これからどのようにそれぞれの地域を安定させ、世界を平和に導くかという処方箋はまだどこにも見つからない。更には新しい世界秩序をつくる為の中心的な役割を果たす指導者も国もない状況になっている。

     そうした中で、今までのようにアメリカ中心で物事を考え、世界を見る日本の人達からすると、あまり好ましいことではないのかもしれないが、最近の中東やヨーロッパの情勢を見ると、ますますロシアの存在感が大きくなっているように見える。ロシアはもちろん、経済面においても問題がないわけではない。資源価格の下落をはじめ色々な課題を抱えているし、今行われているリオデジャネイロ・オリンピックにおいてもドーピング問題で目の敵にされている。その真偽の程はわからないが、全くなかったとは思えないわけで、国家的な不正行為が行われたということも認めざるを得ないと思う。逆に言えば、ロシアの存在感が大きくなってきていることに対する不安が、そういうところにも表れてきているのかなとも思う。

     それぞれの国のトップリーダーが国民の信頼を失いつつある中で、共産主義国家ではなくなったとは言ってもロシアが独裁国家であることは間違いないわけで、プーチン大統領の独裁体制が際立って強固になってきている。ロシア国内からプーチン批判の声は出てくるはずもなく、プーチン体制が安定していることから思い切った外交安全保障政策を打ち出せるのだと思う。中東を見てもシリアのアサド政権を一貫して支え、イランとの連携を益々強め、一時対立関係になっていたトルコとの関係も修復してISにも対峙する。こういう中で、ロシアがどう動くかが中東問題を見る上で最重要になっているし、そのことが西欧社会に与える影響も一際大きい。一方、イスラエルのネタニヤフ政権がますます中東、ヨーロッパで孤立してきているが、そのイスラエルとともに、従来アメリカと強い連帯関係を持っていたサウジアラビアは原油価格の下落がきっかけとなって経済財政が悪化して政治的に極めて不安的になってきている。そのサウジアラビアを支援する湾岸の国々とイスラエルが連携して、アメリカのネオコン勢力の支援を受け、イランやシリアと事を構える危険性も増している。しかしそのことに対して、アメリカはもはや国を挙げて積極的に介入していこうとする考えもない。結局のところロシアがどう動くのかが大きな鍵になってきている。

     アメリカの戦略として、軍事的にはNATO加盟国、経済的にはEUとしっかり連携しながら政策を進めてきたわけだが、そのいずれもがうまくいかなくなってきて、西ヨーロッパ諸国のアメリカ離れが益々はっきり表れてくると思う。アメリカの強い経済力がなければ、EUの中心国であるドイツにしてもフランスにしてもアメリカに頼っているわけにはいかない。むしろロシアの存在感を西ヨーロッパ社会も無視できなくなってきている。

     プーチン大統領はドイツ、フランスとの政治的、経済的連携を深めていき、大西洋から日本海までの広大なユーラシア経済圏を構築しようという狙いがあるように見える。こういうロシアの動きに対して、中国はロシアと対峙しようという考えはないし、アメリカと事を構えようという考えもない。国内に色々な問題を抱えているので、今の習近平指導部が今後どうなっていくのか予断を許さないが、人民元を世界の決済通貨にしようという考えはなく、アジアにおける決済通貨としての立場をより強めていきたいと考えている。ロシアともアメリカとも事を構えるのではなく、協調関係を持った中でアジアにおける盟主の座を狙っているように見える。(続く)